菱中産業の歩みと今

私たちの一世紀を超える社史は、馬具など革製品の縫製がスタートです。モータリゼーションや農業の機械化といった時代のニーズに合わせながら、それを確かな技術として昇華させ、同時に農畜産現場での多くの経験から、飼養動物についてのノウハウを蓄積してきました。
オンデマンドで受注したものを一点一点、製作して納める匠の技。一方ではその刹那で完結してしまうことで、横展開がないという欠点もあります。
数多く集まる顧客のニーズから最大公約数を探ることで、より多くの顧客の課題を先読みし、その解決につながる提案はできないだろうか。目の前の課題から視点を変化させ、俯瞰することで第一次産業の持続可能性につながるのではないか。そう感じ始めました。

 

酪農業界をそうした視点から見たとき、気がつくことがあります。
私たちが拠点としている北海道・十勝地方では、過去30年間で乳用牛の飼養頭数に大きな増減はありませんが、その飼養戸数は1/6以下となっています。いわゆる大規模化で、牛一頭当たりの人員は減少しています。牛を見る時間は減り、担い手不足が深刻化し、業界への参入ハードルは上がっています。
すなわち自動化や省力化で、各営農単位の生産性を上げることが急務になっているのです。

 

私たちは培ってきた確かな技術と蓄積してきた飼養動物に関するノウハウを活かすことで、現場の方々の新たな挑戦をサポートしていこうと決意し、2017年に農畜産ソリューションブランド「GREEN LIGHT」を立ち上げました。
数十年も前にこの課題に直面し、解決してきた農業先進国・欧米から学ぶため、ドイツの老舗モーターメーカー・LOCK社と提携し、牛舎換気の自動制御システムをリリースしたのをスタートに、全自動ダクト式陽圧換気システムで特許を持つアメリカ・CRYSTAL CREEK社との提携により、哺育・育成舎環境の最適化に取り組むなど、世界中にネットワークを広げ、人間と動物の快適な環境を実現する最適なソリューションの提供を進めています。

 

私たちのゴールは、自動化と省力化の推進により人間が動物と接する時間を増やし、アニマルウェルフェアや快適な環境を追求することで、生産性と収益性をもたらすサイクルをつくる。
すなわち、人間と動物の幸せなライフスタイルを創造することです。それこそが私たちのミッション、”Happy people make happy animals.(幸せな人間が幸せな動物をつくる)”です。

ワンヘルスな社会を創造する

僕のファーストキャリアは金融機関でした。
クライアントは個人ではなく法人で、「機関投資家」と呼ばれる銀行や証券会社でした。彼らは個人や企業、年金基金といった様々な人たちのお金の信を託されている。つまりクライアントの思いや目標達成に向けて、最善のケアが求められており、金融業界ではそれを「フィデューシャリー・デューティー(受託者責任)」と呼びます。そのまた彼らのマネーの代理人が僕の仕事でしたから、プロフェッショナルとしてのあり方に身震いしたのを覚えています。

 

その一方、僕は子どもの頃から自然と動物が大好きで、新しいことや見たことのないものをこの目で確かめたいというメンタリティを持っていました。
だから今の仕事もファーストキャリアと何も変わらず、自分は「機関投資家」なんだと思っています。クライアントが金融機関から牧場主や牛たちに変わっただけのことで、「Our clients’ interest always come first.(常に顧客第一主義)」を、僕はすべてのプロフェッショナルな仕事の基本だと思っているからです。

 

「アニマルウェルフェア」という言葉を日本では「動物福祉」と訳したりしますが、僕は違和感を覚えます。
動物の幸せを担保することは、綺麗ごとでも倫理観でもなく、あなたが幸せでお金持ちになるためで、極めて経済的合理性がある投資だと信じているので、クライアントにもそう伝えています。
本当に信じていること、みんなが本当の意味で豊かになると思っていることを発信し続けて、それがメジャーになれば常識は一気にひっくり返るはず。僕はアニマルウェルフェアと生産性・収益性は両立するというヨーロッパでの常識を、日本でも常識にしたいと思っています。そしてそうした「ワンネス」の概念は、いつしかサステナブルな地球の姿を担保する「ワンヘルス(人・動物・生態系の健康)」にも必ずつながると信じています。

 

投資とは、クライアントから託されたお金や思いを増やして返すことです。
私たちは共にそれを目指すメンバーを募っていますが、こんな人と一緒に働きたいなというイメージがあります。
一つは自分の頭で考え抜くことができる人。何のためにするのかという目的を見失わず、そこから引き戻して自分の行動が決められる人のことです。
もう一つは「感電」したことのある人。これはある方の言葉ですが、つまりは常識と言われていることを疑い、自分自身で確かめようというマインドがある人のことです。
そんなあなたが仲間の一人になってくれたら、この上ない喜びです。

GREEN LIGHTを通して描く酪農のサステナブルな未来

新しいアクションを起こすときは、いつもたった一人です。
一人では運営できないので同志を募り、その志に共感して集まった人たちには、さらに多くの同志を集めるために働いてもらう。そして、たくさんの方にプロダクトやサービスを支持してもらい、初めて事業は成長していくことになります。だからその志が邪であれば、クライアントをだまして短期的にプロフィットを得られたとしても、長期的に成功を収めることは絶対にありません。共感し、仲間になってもらう。ファンになってもらうことが必要条件だと思います。

 

僕は事業とは単に金儲けの手段ではなく、価値を提供する行為だと思っています。誰も必要としない、自分が売りたいだけのプロダクトやサービスは絶対に立ち行かない。逆に成功しているものであれば、新たな価値を世の中に提供し、雇用を生み出し、社会を活性化し、豊かにしていると言えます。
例えばビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズ、マーク・ザッカーバーグ。彼らは自分たちのプロダクトやサービスの向こう側に見える未来を、僕たちに分かりやすく見せてくれます。
例えばiPhoneを持った自分がこれまでと一変するコミュニケーション手段を手に入れ、より深く、より豊かに人生を楽しむことができている姿。通話の音質や、カメラの性能はあくまでもそれを実現するための手段でしかありません。
優れた事業とは彼らGAFAのように、世の中のライフスタイルやコミュニケーションを豊かなものに変え得るものです。

 

私たちがGREEN LIGHTを立ち上げたのも、まったく同じ理由からです。
取り組みを続けている酪農の自動化・省力化とは、単にセンサーによって牛舎のカーテンが自動で開閉したり、ファンが回ったりするだけものではありません。アニマルウェルフェアをベースにこれらを掛け合わせることにより、牛舎は動物の快適な生活の場であると同時に、人にとって働きやすい職場にもなる。仕事を属人化せず、センサーやカメラ、数値で管理し、誰もがライフワークバランスを保ちながら取り組めるようにすることで、担い手不足の解消にもつながります。

 

酪農をそんなサステナブルで、魅力的なものにしたいという私たちの大きなチャレンジは、まだ始まったばかりです。
人と動物、また生態系との関わり方には、その国の社会の寛容さや人々の心の豊かさが明確に表れると思っています。

 

 

GREEN LIGHTブランドファウンダー・採用担当
執行役員 佐藤 浩一